episode:伝統の技で作る新しいデザイン畳

株式会社草新舎

自然素材を用いて製作された畳、「草新シリーズ」。
本物の畳の良さを伝えたいという思いから製作は始まった。

この製品が生まれたきっかけを教えてください。

当社は、文化庁選定保存団体の文化財畳保存会に入会しています。入会して10年以上になります。この団体は、国宝・重要文化財の仕事を手掛けた実績のある会社しか入れない会で、当社では元々お寺などの仕事に実績があり、設立から3 年目に入会が認められました。保存会の活動の中で、産地を訪問し本物の資材の生産の現状を学び、その素材をどうやって守るかという検討会も実施しています。一昨年は、大分県の国東(くにさき) 半島の琉球表の産地を訪れ、ピークで400 万畳も生産されていた琉球表が、今では2000 ~3000 畳程しか作られていないという現実を目の当たりにしました。いかにその製造を継続させるか、帰ってからも考え続け、自然素材を使った「本物」の畳に「デザイン」と言う新しい視点を加えることで、資材と製法や日本の伝統文化の保護育成にも役立つのではないかとの思いがありました。東日本大震災では、津波の被害に遭われたお客さまの床上浸水被害の和室の復旧作業を4 月~ 9 月頃まで、休み無く体力と気力の限界まで続けました。やっと一段落した矢先の9 月中旬に、今度は石巻市役所から石巻畳業商工組合に仮設住宅の寒さ対策として、年内に全部の仮設住宅に畳を入れてほしいと依頼されました。それがなんと7000戸もの仮設住宅への畳の納入です。しかも12月いっぱいで。今のままでは寒さで冬を越せないと言われているのに、それを黙って見過ごすわけにはいかないと、とにかくやろうと組合員の合意で決めました。それぞれが付き合いのある各地の同業者に手伝ってもらいながら、休みなしでのフル稼働でした。何とか3 月過ぎには仮設住宅の寒さ対策も全部終わり、やっと時間が空き、長年考えてきた新製品の企画を具体化しようと思ったんです。当社では、お寺を施工する際に用いてきた、丸柱や斜めに切り込む変形加工技術を持っていたので、それを活かした変形の畳作りから「草新シリーズ」の製作が始まりました。そこでこんなデザインでもやってみよう、と何種類かやっているうちに、商品のカタログも作らなきゃ売れないだろう、とみやぎ産業振興機構に相談し、専用のカタログを制作しました。そしてみやぎ優れMONOへ応募した所、第6 回優れMONOを受賞することができました。その後、2013 年12 月に特許を出願、2014 年の2 月に特許「縁無畳の製造方法」を取得することができました。
一般にはあまり知られていませんが、宮城県は、全国一のわら床の産地なんですよ。ですからその素材を守るということは自分のルーツを守るということ。「草新シリーズ」を作ることによって、畳そのものを見直してほしかった。わら床や、い草の天然の良さ、本物の良さ、それを新しい形にして、お客さまに少しでも受け取ってほしいという思いがずっとありました。

子どもの頃秋になると、わらを買いに田んぼへトラックで行ってたんですよ。わらを積んだトラックの一番上に乗っかって、ゆさゆさ揺れる柔らかいわらのベッドに仰向けになりながら秋空を見る、これがすごく気持ちいいんです。わらってすごく気持ちのいいものだっていう事が根っこにはある。だからこそ、畳の深みってわらでしか再現できないって思ってるんです。

「これぞ職人技」というポイントは?

わらの畳は50 センチの厚さのものをぎゅっと圧縮して縦糸と横糸で縫いつけてあるのですが、普通の畳は正方形や長方形なので切りながら縫っても膨れないんです。でも斜めに切った途端、綴じている糸そのものを切ってしまうので全部わらが飛んでしまいます。それをそうならないような施工方法(特許)を開発して変形の形に仕上げています。畳の角や丸みの部分の施工技術は熟練の技と経験があってこそできるものだと思っています。

製品の技術を学ぼうとする畳会社もいるのでは?

当社のデザイン畳を見て、同じ物を自力で作ろうと思う同業者はいないと思っています。それだけ手間と技と意欲がないと作れません。普段からお寺等に納入するわら床を扱っていて、天然のい草を使って、変形の仕事を日常的にやっていないと作れないのです。ですから、今後は時期をみて、希望する施工店への技術の伝承も考えています。まずは、今度の東京、神奈川、熊本の納入には、現地業者の協力をお願いして納品する事にしています。

どのような人に利用してもらいたいですか?

「草新シリーズ」はその素材の希少さと手間の掛かり具合が、他の畳の製法とは全く違います。だから、どうしてもコストが嵩む造りになってしまいます。安く作れないんです。ならば、高くても価値のわかる人に使ってもらいたい、本物の価値を認めてもらえる人に買ってもらいたいと考えるようになりました。だからこそ、わかりやすく簡単に説明したい時には『畳のフェラーリ』と注釈しているんです。「草新シリーズ」は、本当に価値のわかる人達に買ってもらえるものにしたいと思っています。一般的なものづくりでは何でも製造コストをまず先に考えます。最初に買って貰えそうな価格を設定して、いかに安い資材で工程も出来るだけ削減し、極限のローコスト化を目指します。今ほとんどの物が大量生産大量販売を前提に製品化を目指すのが基本的な考え方になっています。でもものづくりを続ける中で、それはおかしいと思っていました。そんな考え方では、希少産地の復興には役に立てない。きちんと認めてもらえる物さえ作れば、商品価値も認めてもらえると考え、方向を逆転させました。今では、私の仕事はいかにお客さまに喜んでもらえるか、そのために商品をいかに魅力あるものに作りあげていくかを深めていく事だと思っています。

畳を、今後どう後世に伝えていきたいですか?

日本文化の根底を支えてきたのは、い草とわらの畳。ですが、わら畳床は表面に見えないので、現在どんどん他の素材に成り替わってしまって、本物の畳というのはほとんどなくなってきています。肌で感じる香りであったり、柔らかさであったり、そういうものが「本物」の畳でないと伝えられない。この状況の中で、少しでも新しいニーズが生まれれば、次の世代にも、ものづくりの意義を伝えられるかもしれないので、これからも少しでも良い素材を使って新しいニーズを作って、事業を継承・拡大できるような可能性を作りたいと思っています。実は、若い人たちが「草新シリーズ」を面白がってくれていて、2014年秋、大阪のリビングデザイン展に出展した時にある美大生がとても興味を持ってくれて。その時に言われた「大人にこんなことやられたら(私達)やること無くなるでしょ」という言葉、うれしかったですね。「草新シリーズ」がさまざまな世代の人に興味を持ってもらえるきっかけというのは、独特な形だからだと思っています。本物を残す為に始まった変形のデザイン畳ですが、時代のニーズにも合っていると思っています。

今後、製品をどう広めていきたいですか?

最近は雑誌の取材が続き、その中でイギリスの「WALLPAPER」という建築デザイン雑誌のWEB版にも取り上げてもらいました。その記事でスウェーデン、スイス、ドバイ等からも問合せが入るようになり、今、輸出の下準備を始めています。まずは、早い時期にイタリアにテスト輸送をやってみる予定です。畳を輸送する手段として、当初は船便という話もあったのですが、船便だと1 ヵ月も2 ヵ月もかかりますし、赤道を越えると40℃~ 50℃のコンテナの温度の中で結露してカビが生えてしまうんですよ。なので、飛行機で送ろうと今準備しています。海外のユーザーに本物の畳の香りをお届けしたいと思っています。

20年後、会社はどうなっていると思いますか?

私も分からないですよ(笑)会社を大きくしたほうがいいのか、大きくしないほうがいいのか。でも、淡々と積み重ねていって、振り返ったらこうだったっていう、そういう会社でありたいですね。たぶんそうあり続けると思います。目標は、1000年企業ですね。

最後にビズプロ・クロスをご覧になっている皆様へ

うちが目指すものは、『B to C』なんです。『B to B』ではなく、『B to C』を極めるにはどうしたらいいかということをこれからも考え続けていきたいと思っているので、ビズプロ・クロスを見て、お客様に近い事業を営んでいる企業が、当社とどうやって接点をもってくれるかということには興味があります。当社の取組の理解者の一人として、一緒に商品を高め合うような協働、当社の理念に共感してもらえる企業様がいれば、ぜひ御一緒に、と思います。

株式会社草新舎
〒986-0323 宮城県石巻市桃生町神取字屋敷69
TEL0120-073-060
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