episode:「海から陸へ」造船技術と建築の融合

株式会社髙橋工業

江戸時代から代々続く船大工として培った造船技術で、独創的な建築に挑む日々。
髙橋工業の技術が海を渡る日も近い。

創業の経緯は?

私の家系は代々続く船大工の棟梁で、時代の変遷とともに木船、鉄船から鋼船建造を通じて東北・北海道地方の漁船漁業の隆盛の一翼を担ってきました。しかし、1975年の200海里規制による漁業海域の縮小、これと前後したオイルショックによる燃油高騰の影響を受け、漁船漁業を取り巻く経済環境が一段と厳しさを増し、取引船主の相次ぐ倒産により、1985年に家業の髙橋造船もやむなく廃業にいたりました。それから設計事務所として船の設計を手伝わせてもらっていましたが、幼少の頃から、祖父や父から学んだ造船が私の代で途絶えることへの悔いと、次世代への継承をすべく1985年に実弟と二人で協力し、船舶艤装・修理および鋼構造物工事を目的とした髙橋工業を設立しました。

造船から建築へシフトしたきっかけは?

1994年にオープンした気仙沼市の「リアスアーク美術館」の建築に携わったのがきっかけです。リアスアーク美術館の建設中に、早稲田大学の石山修武(おさむ)教授が、鉄板が曲がっているようなデザインを提案したのです。建築の世界では鉄板を曲げること自体あまり例も無く、非常識だったんです。建設会社がこの無理難題なデザインにどう対応するか困っていた時に、たまたま当社にできないかとお声掛けをいただきました。造船の際に鉄板を曲げる事は当たり前のようにやっていたので、船の外板を曲げる鐃鉄(ぎょうてつ)※を応用して出来ますと。これが、建築にシフトしていくきっかけとなったのです。それまで造船しか行っていなかった為、その時に初めて建築の図面というものを見ましたし、何といっても建築用語の意味が分からず苦労しました。造船の用語に置き換えて理解していきましたね。
※鐃鉄…鉄の収縮特性を利用し、火炎と水により連続した塑性(そせい)変形を鋼形に生じさせ、任意の複雑な三次曲面を加工する造船独自の技法。

従業員が10ヵ月本業をしたら、2ヵ月は自己鍛錬の時間にしていると聞きましたが?

一つの仕事が終わって、次の仕事まで少し時間の空いた時にそうしています。もう少しこうすれば良かったという工夫の見直しや、工具の整備など、トータルで2ヵ月。本当は半年あればいいのですが、生活ができなくなってしまいますから。やはり本物を作っていますので、失敗しましたという訳にはいかない。100%中の95%は、自信が無いと出来ないです。その為には自分達で訓練をしていかないと、お客様にきちんとした物は出せないですから。
作品をどのように作っていくか、設計の段階から考えなければいけません。そこに試行錯誤する時間は必要だと思っています。訓練をする事によって社員一人ひとりのノウハウとして蓄積されますし、社内で情報を共有する時間をとる事もできます。ですので、2ヵ月という時間は必要ですね。

「さ美」を開発したきっかけは?

鉄に耐候性元素の銅、ニッケル、クロムを添加する事により、鉄の弱点である腐食を、自ら作り出す緻密な保護性錆で抑制するという特性を持つ『コールテン鋼』に目を付けたのが今から14、5年前。これを用いてデザインした建築物で、当社の代表作となったのが「IRON HOUSE」です。しかし東日本大震災の津波で社屋、工場が全壊して、機械も何も無くなってしまいました。そんな中、今持っている道具を用いて手作業で何が出来るかと考えた時に、「さ美」を作ろうと思ったんです。自分達の身近にある様な物をコールテン鋼を用いて製品化して、サイトで売る事が出来ないかと考えました。
コールテン鋼は様々な形に加工する事が出来ますので、作品の数は無限にありますよ。用途も数え切れないほどあります。今まではオーダーを受けての受注生産のみだった所を、「さ美」の場合は販売の仕方を変えて、製品を生産しておいて、お客様からの注文があれば販売をする、いわゆる小売り型にしたんです。2015年11月に台湾で行われる台北商談会でも販売します。日本でも商標登録をしていますが、台湾でも申請を出したので、それが通れば当社のブランドとして販売する事ができます。

今後行っていきたい事は?

震災後に、「5年以内に海外に1ヵ所拠点を作る」という目標を立てました。まずは、台湾ですね。台湾は日本に対して友好的ですし、文化も似ている。その10年後にロンドン、ニューヨークと広げていこうと思っています。やはり、ただものづくりをしているだけでは面白くないですよ。どんどん自分達の力を腕試ししていこうと思っています。生活も大事ですが、ただ食べていくだけでは夢がないですからね。

他に力を入れている事業は?

電気動力のアルミ船の制作に力を入れています。生活に使える川や沿岸を行き来する為のボートですね。小型船によく使われるFRP(繊維強化プラスチック)は耐用年数が伸びているので、木製よりは長持ちしますが、燃やせないという点が欠点です。それに比べてアルミは、リサイクルが可能なエコ素材です。これからは、環境という問題にいかに関心を持つかだと思っています。現在制作しているアルミ船もエコがテーマなので、エコのクリーンエネルギーの電気を使うと自然環境に負荷をかけません。釣りを楽しんだり、養殖に使ったり、川下りとか、エコのアルミの電動船になっていけばいいのかなと。現在、開発段階で、1隻目が完成したところで、今後、事業化していく予定です。

最後にビズプロ・クロスをご覧になっている皆様へ

同業者が聞くよりも、異業種の方が結構適切なアドバイスをしてくれるのではないかと思っているんです。実際に私も早稲田大学の石山教授に建築について声を掛けていただいた様に、自分達が気付いていないだけで、異業種からしたら「こんなことも出来るんじゃないか?」という事もたくさんあると思うし、独創的な考え方からものを言ってくれると思うんです。ビズプロクロスは、そんな異業種が交流できる場所ですよね。他の企業様もいろいろな分野で活躍していますので、それぞれが相手の会社を理解しながら、もう少し協調性を持っていくと、いろんな事業展開が見えてくるんじゃないかな、と思いますね。

株式会社髙橋工業
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