episode:あらゆる可能性を実現する“非接触動力伝達装置”

株式会社プロスパイン

長年培った精密加工技術をもとに、磁力の反発と吸引により接触せずに動力を伝える
「マグネットギア(非接触動力伝達装置)」を開発。

設立のきっかけを教えてください。

もともと私は東京の会社に勤務しており、古川の工場に異動を命ぜられた時の上司から、「生産加工をする上で金型をいかに調達できるか調査して欲しい」と言われたのが実はきっかけです。日本全国の金型会社を車で訪問して、「こういう物を作って欲しい」とお願いしました。そのうち、お付き合いしてもいいよという会社が10社。しかしその中で本当にお付き合いできる会社でなかったり、見積もりの時点で折り合わなかったなどの理由で、結局ゼロ。上司から次の策はあるかと言われまして、よそでやってくれる人がいないんだから、社内にいる人材を独立させればいいじゃないかと思い、その為のプランを作りましたが、誰もやりたがりませんでした。それで私も他の職場に配属してもらおうかというような気持ちでいましたが、悔しい気持ちもありまして。それだったら自分でやったらどうなんだろうと思って、「私に任せてくれませんか」と、1978年に自ら進んで独立したんです。創業当時の従業員はたったの4人。ほとんどが未経験者でしたから、本当にゼロからのスタートでした。最初は六つの面を並行に加工する「六面加工」をして納める事から始めて、その後穴を開けたり削ったりと加工の仕事を増やしながら、設備や人を増やしていきました。一つ良かったのは、上司から「金銭的な支援はできないが、仕事を投入する支援はする」と言われていたので、仕事が途切れる事はなかったという事。みんな若かったので、土曜日も仕事をしていましたね。楽しい苦労でしたよ。月に1回位みんなで鳴子温泉に行ったりして。一次加工は素手で作業する事が多く、手はいつも傷付いたり汚れていたのですが、温泉のロッカーにいた知らないおばさんが、私達の手を見て言った「その手が稼いでるんでしょ」という言葉、ジーンときましたね。今でも忘れられないです。

マグネットギア(非接触動力伝達装置)開発のきっかけを教えてください。

スタートは2003年ですね。当社はそれまでずっと金型の加工をしていましたが、売り上げが少なくなったりして、負のスパイラルに陥ったんですよ。そんなこともあって、何かしなきゃいけないという思いがあって。でも何をすればいいのか本当に悩みました。とにかくいろんな事をやりましたね。その中で風力発電機を作った時に、動力伝達機構(風を動力として伝達する仕組み)に、もっと効率良く抵抗無く伝えられる物は無いかと悩んでいたら、当時宮城県の産業振興機構にあった、企業のいろいろ課題に対し助言する「経営塾」で接触歯車を開発していた東北学院大学の鶴本勝夫先生を紹介していただいたのです。当時先生もものすごく苦労して作られていたので、これを当社で精度良く作ったらどうなるんだろうと、先生の考えたものを図面化して作ったんです。作ったのはいいけれども、これが何に使えるかという問題になりました。
そこでいろんな展示会に持って行くうちに、共同で研究してみたいという企業が出てきまして、現在は半導体製造装置、医薬品の攪拌(かくはん)装置、食料品製造機、食品製造用のラインなどで使っていただくなど、今の所は製造現場や搬送装置的な物に使用されています。うちの装置がBtoCになる可能性は現在無いんですよ、BtoBなんですよね。

「プロスパイン」という社名の由来を教えてください。

元々は「松栄(しょうえい)工機」と言う名前でしたから、そのままでも良かったのですが、当社の製品にどんなブランド名を付けるか社員で考えた時に出てきたアイデアの中から「松(Pine)」と「栄(Prosper※「繁栄する」という意味)」をひっくり返して組み合わせた『プロスパイン』という名前に決めました。それなら社名も同じくしようと、2011年に社名も改称したんです。

カメラの雲台開発のきっかけは?

当社ではカメラ三脚用の高精度雲台の開発も行なっています。2000年6月頃、カメラ三脚用雲台「erg(エルグ)」の設計者である富所皖之さんから雲台製作のお話をいただきました。富所さんの厳しい設計要求に試行錯誤しながらも応えて作っていき、雲台を完成させた後にはプロのカメラマンが集まる東京都新橋の写真屋に置いてもらい、月15台位の売上がありました。しかし2007年頃に富所さんが亡くなってしまったので、製造を中止していたんです。しかし、製品を欲しいと思って下さる方の為にも、富所さんへの弔いの為にも、もう一度雲台製作に取り組もうと、ブランド名を「prospine(プロスパイン)」として現在は製造しています。今でも毎月3~4台は注文をいただいていますね。

今後行なっていきたい事は?

創造(構想・着想)から開発・設計・試作を繰り返してきていますが、より機能を充実させ、使用できるものにしていく、そのために国内にあるいろんな展示会に参加しています。しかし、最近の日本は、どちらかというと新しい物ばかりを使いたがる傾向にあると思うので、2016年からは海外の展示会を多用していきたいと思っているんです。もちろん国内の展示会にも参加しますが、国内と国外の展示会を、“自社の宣伝”と“商売”のケースをうまく使い分けて参加していきたいですね。同時に将来の技術革新のため、チャレンジしてくれるエンジニアが希望をもてる会社づくりが課題になってくると思いますし、そう心掛けていきたいです。

20年後どのような会社になっていると思いますか?

これからの20年も、今までの10年や20年と同じ様な感じじゃないですかね、そういうサイクルで考えた方が良いんじゃないかなと思うんですよ。ただ、金型産業は増える事はないと思うんですね。微減状態で減っていくと思います。そんな中でどのように生き残っていくのかが我々の課題になってくると思います。販売量にしても金額にしても、30年後40年後を見た次なる商品開発戦略があるべきかなと思っているんです。企業として存続していく為に、技術の継承もしていかなければならない、これからもそういったチャレンジをしていく会社にしていかなくてはならないですよね。あとは地域に目を向けていく事ですかね。地域産業の雇用を促進していく為に、我々が役立てるものは何なのか考えていく時代がいずれ来るんじゃないですかね。

株式会社プロスパイン
〒987-1305 宮城県大崎市松山次橋字新千刈田117
TEL:0229-55-3375(代表) FAX:0229-55-4340(代表)
HP:http://www.prospine.jp/