episode:震災乗り越え 職人技の「手わざ笹かまぼこ」

株式会社ささ圭

東日本大震災による甚大な被害を乗り越え、50年以上前の「手わざ」を復活。
石臼で練り上げたすり身を手でたたいて成形し、丹念に焼き上げていく。全てにおいて、職人の技が光る。

「手わざ」のかまぼこ製造は、創業当初からの技術なのですか?

会長がかまぼこ屋の息子なので、手造り笹かまぼこの技術は持っておりました。1966年(昭和41年)にささ圭として創業した時には、成形は手作業でしたが、既に焼く作業は機械で行なっていました。さらに高度経済成長とともにどんどん機械化していき、工場で作業する従業員も少人数で済むようになりましたし、作業の効率も上がっていきました。ですから、創業から「手わざ」で作っていた訳ではなく、今回の全て手作業でのかまぼこの製造は、ささ圭創業以前のやり方だったのです。

「手わざ」でかまぼこを製造する事になったきっかけは?

2011年(平成23年)の東日本大震災の津波で、工場や設備が全壊・流失してしまい、一時は廃業も覚悟しました。震災の年の5月頃には牛たんソーセージなどの仕入れ商品を販売していたのですが、やはりうちはかまぼこ屋ですし、お客様から「かまぼこはもう焼かないんですか?」というお話もたくさんいただき、かまぼこ屋として、何とかもう一度立ち上がってみようと思ったんです。10年以上前から会長夫妻と私で、地元の閖上小学校さんの出前授業で手わざのかまぼこ作りを教えていたので、会長夫妻が手わざの技術を持っていた事は分かっていたんですね。なので、2人に手わざの技術を教えてもらい、「手わざ笹かまぼこ」を作ろうと思ったんです。石臼などの必要な道具を調達し、かまぼこを刺す金属の串は、津波で工場の周りに埋まっていたのを社員たちと探して、泥だらけになった串をひたすら磨いて直しました。こうして、ささ圭の「手わざ笹かまぼこ」作りへの挑戦が始まったのです。今まで全て機械で作っていたので、すり身に手で触るという事がほとんどなく、最初は機械で作るようなきめの細かいすり身がなかなか作れず苦労しました。石臼ですり身を練り上げる場合、温度などで仕上がりがものすごく左右され、そのためダマができてしまったり、本当に毎日が試行錯誤でしたね。それでも、少しでも良い商品にしてお客様へお届けしたいという思いで、社員全員で必死になりながら覚えました。津波で場所も設備も無くなってしまった中、唯一残っていた内陸部にある売店を改造し、7月1日からお店の営業を再開、「手わざ笹かまぼこ」と揚げかまぼこ「遊里揚ゆりあげ」の2商品の販売を始めました。お店をオープンする時も広告などは出さず、ひっそりと開けようと思っていたのですが、口コミのおかげでたくさんのお客様が来てくださいました。お客様自身も震災で辛い思いをされているのに、「お店を開けてくれてありがとう」って言ってくださって。それが本当にうれしかったですね。

「手わざ笹かまぼこ」への思いとこだわりを教えてください。

「手わざ笹かまぼこ」は、震災で何も無くなってしまい廃業するしかないという、前にも後ろにも行けないような、そういう極限の状態から決断して作りはじめた商品です。これをもし失くしてしまったら、手技の技も味も、私達の思いもそこで終わってしまう事になるので、これは次の代、そしてその次の代へと長く伝えていかなくてはいけないという思いで現在も作っています。一人でも多くの方に召し上がっていただけたら嬉しいですね。

新商品の開発に力を入れているそうですが?

震災前の工場では1時間に5400~5600枚焼いていたのに対し、売店にある小さな工房では1時間に300枚しか焼くことができなくて、個人のお客様だけにしか販売できず大手のお取り引き先には全く商品が出せないような状況が続きました。1年半後の2014年(平成26年)にようやく工場ができたものの、今度はなかなか販路が戻らないという状況で、現在に至ります。津波で工場とともにお得意様名簿はじめ商品のレシピなどが全て無くなってしまったので、少しずつ新商品を作ったり、商品にさらに磨きをかけたりという事を現在行なっているところです。新商品の開発は2014年(平成26年)頃から力を入れており、昨年の6月には宮城県でとれた野菜にこだわったチーズinかまぼこ「みやぎの雫」を作る事ができました。若い方々の「かまぼこ離れ」をなんとか食い止めたいと蒲鉾の新たな面に挑戦した商品です。この製品は本当に多くの方々にご支援いただき出来上がった商品で、時間をかけてようやく生まれましたので、これから大切に育てていきたいと思います。「第2回新東北みやげコンテスト」で最優秀賞をいただいたことも有り難く、励みになりました。そして11月にはかまぼこの上にカニなどの魚介類を乗せた「海鮮かまぼこ」の販売を開始しました。「海鮮かまぼこ」は、味もおいしく見た目も華やかで、食卓に花が咲く様なイメージで作りました。かまぼこって、なかなか食卓の主役にはなれないんですよね。「名脇役」っていつも私は言っているんですけど、でも「みやぎの雫」や「海鮮かまぼこ」は充分、食シーンの「主役」になれる商品だと思っています。

今後行なっていきたい事は?

これは私の個人的な考えなのですが、これから先もささ圭は、食に関する仕事であることは間違いないと思うんですけれども、かまぼこだけでずっとやっていくのは正直言って難しいのかなと思うこともあります。すり身の値段もどんどん上がっていく一方なんですよ。商品の値段をできるだけ抑えようとしても抑えきれず、どうしても値上げせざるを得ない状態に、今かまぼこ業界はなってきています。そうすると消費者は、ある程度値段が安定していて、子ども達にも好まれる精肉、ソーセージやハムの方に行ってしまう…というような状況がずっとあります。「かまぼこ」という食材が、良質のたんぱく質を使っていて、子ども達の成長にもすごく良いという事を、いろんな形で私達もアピールし続けておりますし、これからも業界としてどんどんしていかなくてはいけないと思います。と同時に、私共ではこれからも伝統の守るべきところはしっかりと守りながら、時代の変化に応じた物を全社を挙げて試行錯誤しながら作り上げていくことで、何とか「ささ圭」の生き残る道を探ってまいりたいと思います。
若い社員たちとともに、もっともっとかまぼこの新しい可能性にチャレンジしていけたらいいですね。そして、やはり地元の復興ということが何よりの目標ですね。私共ささ圭を育ててくれた地元閖上の復興にも深く関わっていくことで少しでも恩返しできれば、との思いでいます。

株式会社ささ圭
〒981-1226 宮城県名取市植松字入生48-1
TEL:022-784-1239
HP : http://www.sasakei.co.jp/index.php