episode:『ドアノック』からのスタート

株式会社NTTドコモ東北支社

被災地の復興専任組織として、2011年12月に発足した「東北復興新生支援室」。
現場を『ドアノック』していく事から復興支援への第1歩が始まった。

この組織が生まれたきっかけを教えてください。

東日本大震災ではドコモの設備も多く被害を受け、直後はサービスの中断もありました。震災直後、とにかく早期に通信設備を復旧させる事、サービス中断を無くす事が大命題でした。これまでの災害対策の取り組みが機能しないほどの大規模な震災。広範囲での停電と、地震・津波による直接被害で、その復旧に時間がかかってしまったんです。2011年4月27日、震災前のサービスエリアにほぼ復旧したことから、新たな災害対策の取り組みを発表しました。この新たな取り組みは2012年2月に概ね完了しています。その一方、震災直後から避難所に避難されていた方々の通信手段が無くなってしまい、安否の確認ができなかったという事があったので、社員みんなで仮設住宅や避難所をまわって、携帯電話の充電設備や衛星携帯電話の貸し出しをさせていただいていました。ある程度設備的に復旧して対策も終わった時、果たしてドコモとして、震災に対してこれでいいのか?と思ったんです。継続した復興という意味ではまだまだな状況でしたので、引き続き何らかの形で関わるべきだろうと。ところが、営業部門などが関わると業務があるので、復興活動は片手間となり中途半端になってしまいます。ならば専任組織を作ってしまおうと、2011年の12 月に「東北復興新生支援室」を発足させました。初めての復興支援専任の組織でしたので、どのような人材を集めるかという点に苦労しました。復興支援活動をやりたいという強い意思を持った社員でなければ地域に貢献できないと思い、全国の社員に募集をかけて40人位の方に手を挙げていただき、そこから選抜して10名程のメンバーで組織を発足して現地を回る活動を始めました。

まず最初にどんな活動を行ったのですか?

最初はとにかく「現場に行け」と。東北復興新生支援室の籍は東京にあって、そこから出張で現場に行く事になるんですけれども、当然マニュアルも何もないですし、何をしていいのか分からない。行けと言われても、どこに行けばいいのかさえも分からない状態でした。なのでまずは、自治体を担当している営業の社員と同行して、ドアノックから始めたんです。「何かお困りごとはないですか、私達ドコモなんですけれども、何かお手伝いできることがありましたらなんなりとお声掛けください」と。そこから始めました。ただ当時は、いろんな企業様が被災地に押し寄せていて、ただでさえ職員の数が減って作業量が倍になっている自治体側は、ビジネスをしに来る多くの企業にうんざりしていたんです。そういう意味では、当時の被災地の自治体の企業に対するイメージはすごく悪くて。またドコモさん何しにきたの?という感じだと思っていたのですが、幸い震災直後に社員が避難所を回っていた事はどの自治体の職員の方も覚えていてくださって、「あの時は本当にお世話になりました」という事をおっしゃっていただけたので、我々は比較的スッと現場に入っていけたんじゃないかなと思います。

「未来の種プロジェクト」を始めたきっかけは?

ドコモの象徴的な復興支援活動として、2012年5月にスタートした「未来の種プロジェクト」が挙げられます。これは、アミタグループと南三陸町入谷地区の農家さんと3者がそれぞれの強みを活かして、無農薬ササニシキと薬草トウキの栽培をすることで地域のブランディングを目指すプロジェクトです。ドコモの役割はWebサイトやSNSを活用した情報発信と商品開発です。農山漁村と都市の人々が共感でつながり、支えあうコミュニティづくりを目指しています。今年から新たな取組みとして、「CSA※」という会員制サービスを展開しました。実際に会員が農家さんと一緒に田んぼでお米づくりを体験して食べ物を作る楽しさや苦労、収穫の喜びを分かち合う新しいコミュニティーサービスです。今年の田植えでは、仙台と東京から約20名弱の会員が田んぼに集まり、田植え機に乗ったり、畔づくりや生き物観察を行うなどして大いに賑わいました。年に3回はササニシキと一緒に南三陸町の山の幸、海の幸をお届けします。その日の食卓は南三陸町を感じて頂けると思います。
【CSA】
※Community Supported Agriculture
地域住民が地元の農業を支えるための仕組み。地域支援型農業。
「未来の種プロジェクト 農家阿部さんと仲間たちのCSA」
http://mirainotane.jp/csa/

「Smart Action for Forest」について教えて下さい。

「Smart Action for Forest」としての取組は2013年から始めました。南三陸町の地域特性を活かしたブランディング、特に「森」についてのプロジェクトをやりたいという思いがずっとありました。そんな時に、南三陸町の町有林がフォレストック認定を受けるという話を聞きました。フォレストック認定制度とは森林の管理・経営、生物多様性、CO₂吸収量などの面から森林を評価したもので、森林機能を「CO₂クレジット」として価値化する森の認証制度です。この認定制度を活用した木製グッズを当社の販売チャネルで販売する事で、購入したお客様が南三陸町のまちづくりに参画する事ができるのではないかと考えました。そこで、間伐材を使用したスマートフォンホルダーを作りドコモショップとオンラインショップで全国販売をしたんです。その売り上げの一部に、ドコモが同額を加えた「森林保全クレジット」を南三陸町にお渡しして、再び森の保全に使っていただけるような仕組みを作りました。これがとても喜んでいただいて、多くのお客様に関心・共感をいただいています。南三陸町はバイオマス産業都市構想を掲げ、木質ペレット事業はその柱の一つです。森林保全クレジットは、木質ペレットを燃料とする「ペレットストーブ」の導入補助に使われています。2015年2月には岩手県産のイタヤカエデを材料に陸前高田の工房でiPhone6用ケースを製造して販売しています。南三陸町と同様、売り上げの一部を岩手県の森林組合にお渡しする仕組みとしました。

「北限のゆず研究会」設立のきっかけは?

岩手県の陸前高田市は漁業が盛んな町で、漁師さん達は海上での貴重なビタミン源として自宅の庭にゆずを植えていたんです。しかし、震災で漁に出る事ができなくなり、ゆずはトゲが多くて収穫するのが大変なので、実をつけたまま放置されていたんです。そんな状況を社員が目の当たりにして、ゆずをうまく地域資源にできないかと、いろんな人を巻き込んで2013年6 月に「北限のゆず研究会」を立ち上げました。北限のゆずを陸前高田市のブランドにするべく、ゆずを使った「ゆず酒」や「ゆずビール」、お菓子などの様々な商品を、収穫から一時加工、販売を含めて地域を巻き込みながら行っています。ゆずの収穫時にはボランティアを募って、年に7~8回、10月~11月の土日にみんなで収穫をしています。

今後行っていきたい事は何かありますか?

当社の組織の中で、お客様と直接接しているのはドコモショップです。ドコモショップ以外で地域に対して深い関係性をもって活動している部署はほとんどありません。私達が復興支援活動を通じて地域との関係性を深めるという事をシンボリックに行うことで、地域に寄り添うドコモを示していきたいと思います。2 つ目は、課題解決をビジネスに変えていく事。課題を抱えている人からお金は頂けないので、課題解決ってなかなかビジネスになりにくいんです。でも、被災地の現場でいろんな課題に関わってきた私たちだからこそ、市場を創ることができると思っています。ビジネスとして廻る仕組みを提供できれば、それは持続可能な課題解決モデルとなります。現在少しずつビジネスになりそうなものはできているので、それをお客さまに使っていただいて、「無いと困る」と思っていただけるサービスを創っていきたいと思っています。

ビズプロ・クロスをご覧になっている皆様へ

当社だけで、被災地の課題解決を全て出来る事ではないと思っていて、地場の器用さを含め、いろんな企業様との協力が無いとなかなか真に望まれることができません。我々の活動を知っていただいて、一緒にやりたいと思っていただいたり、こういう事ができるというアイデアがあれば、お気軽にご連絡いただけたらなと思います。

株式会社NTTドコモ 東北支社
〒980-8515 宮城県仙台市青葉区上杉1-1-2 ドコモ東北ビル
TEL 022-752-5011(代表)

■3月12日掲載のビズプロ・クロス記事もご覧ください。
「東北をつなぐ、ドコモRainbowプロジェクト」
http://bizpro-x.com/article/detail?category=4&article_id=241