episode:老舗和菓子屋の挑戦

株式会社玉澤総本店

玉澤総本店の看板商品として10年以上のロングセラーとなる「黒砂糖まんじゅう」。
時代が変化してもなお、お客様の声に耳を傾け、改良と工夫を続けている。

この商品が生まれたきっかけを教えてください。

最初、商品を見た時に、「あ、行けるかな」というニュアンスはあった事は確かです。ただ、現実的に最初から売れたかと言われれば決してそうではなくて。和菓子屋の中でも蒸し物で代表的な物といえばおまんじゅう。中でもインパクトがあった「黒砂糖まんじゅう」を、機械メーカーさんが持っていた黒糖まんじゅうのレシピに基づいて作ってみたんです。しかし、独自性が無い。より独自性のある物にしていこうと、機械メーカーさんのレシピをベースに、原料には一番相性の良かった沖縄県波照間の黒糖と、もちもち感と口当たりの良さを出すために九州の葛(くず)を使用し、独自にレシピの試行錯誤を重ねた結果、当社オリジナルの「黒砂糖まんじゅう」が誕生しました。

波照間産黒砂糖は他とどんな所が違うんですか?

波照間の黒砂糖は、個性が強く、味自体が濃いんです。前に1度波照間島に訪れた際に、波照間製糖所の所長さんからサトウキビの収穫は、他の島だと機械で狩るケースが非常に多いのに対し、波照間の場合は、品質保持の為に75%は全て手作業で行っていると聞きました。機械で作業する際には避けられない土の混入を抑えることができるそうです。

商品開発のこぼれ話

ある時、お客様から「少ししょっぱい」と言われた事があるんです。原料の配合を誤った訳でもなく、原因を突き詰めていくと、なんと黒砂糖にありました。黒砂糖の原料となるサトウキビが収穫される波照間島は、周囲が大体15~16kmで、周りは海。最南端の島です。ですから台風が来てしまうと、海水を多くかぶってしまうんです。そこで調べた所、その時期に台風が多く海水をかぶったサトウキビからできたお砂糖がしょっぱくなってしまい、おまんじゅうの味が微妙に変化してしまったという事が判明しました。本当にお客様の舌は間違いないと思いました。だからこそ、お客様には嘘は付けないです。ですから我々も、きちんと良い物を作るという事の姿勢は、お客様に伝えていかなければ息の長い商品作りはできないと思っています。

一番苦労した点は?

一番苦労したのは、年間を通して均一な商品を作ることでした。その為には暑い時、寒い時の生地の調整が大変でした。夏場になると、外気がどうしても高くなってしまい、当時の工場内は冷暖房も無く、暑かった。そうしますと、生地がだれやすいんです。逆に冬になると、外気が冷えて生地がしまる。商品のおいしさ以前に、季節ごとの外気による形の不統一が問題でした。私が工場で働いてから十数年になりますが、開発当時よりもさらに均一な商品を出すため、製造時の生地とあんこのデータを常にとり、数十年間の資料を基に、均一の商品をお届けするようにしています。

黒砂糖まんじゅうが看板商品になったきっかけは?

大きくコマーシャルを打ったという事は無く、ずっと口コミでお客様を増やしてきました。後は、仙台出身の元宝塚トップスターで女優の杜けあきさんや、フィギュアスケーターの荒川静香さんなどの有名人の方にアピールしてくださったりという影響もありました。今でこそ仙台の皆様に少しはお役に立てているかなとは思うのですが、やはりお客様にはいつも支えられているなと感じます。これからも、我々にとって「黒砂糖まんじゅう」という商品をどのように生かすか殺すかも社員一人一人の責任だと思っています。

よりよいものを作るために行った事は?

「黒砂糖まんじゅう」は、最初はレギュラーサイズのみの販売でした。7、8年前にこのサイズでは大きいという声をいただいた事をきっかけに、女性やお子様も食べやすいミニサイズの商品も作り始めました。試行錯誤の中で、もしかしたらレギュラーサイズの商品と“共食い”してしまうかもしれないと思ったのですが、幸いにしてお客さんに両方のサイズを好んでいただいています。ミニサイズのおまんじゅうの製造は、機械を使用しないとできないですね。機械があるからこそ、ミニサイズの商品ができたと思っています。それと、社内の販売の方から「2日間の賞味期限だと、今日商品を購入しても明日までしか食べられないとお客様が買う事を遠慮してしまう事が多い」という意見から、賞味期限を時間で表記したら良いのではないかと考えました。そうすれば、今日の朝7時に商品を製造しても、賞味期限は明後日の7時まで。そうすると全然違うんです。これは、ミニサイズにも同様に印字されています。賞味期限に時間を印字したおまんじゅうは、たぶん当社が最初だと思います。賞味期限も、48時間から試行錯誤の中で、72時間まで延ばせるようになりました。

今後行っていきたい事は?

上杉本店が新店舗になる時に新商品である「あんさぶれ」を誕生させました。いろいろな本を見ていた時に、この商品いけるかなと思ったのが「あんさぶれ」の原型です。原型であるお菓子は中にチョコレートを挟んでいるのですが、当社は和菓子屋だからとこしあんを入れて、なおかつ上に黒ゴマを乗せて、本来の原型のお菓子をアレンジして商品化しました。また、お菓子というものをもっと皆様に知っていただきたいという思いから、2014年3月末に「上杉工房」を上杉本店の中にオープンさせました。子ども達にお菓子を作る課程を見せてあげたいですね。「上杉工房」の中には実演工房があり、お菓子作りを目でも楽しめ、作り立ての味をその場でお召し上がりいただけるようになっています。後は、会社として仙台駅の「ステルネ」という所に2013年の12月からいろいろアクションを起こしていて、それに向けての新商品の開発などを現在行っています。おかげさまでこれだけの店舗を持たせてもらっていますけれども、仙台の地で深く掘り下げていく事が基本で、横の広がりでは無く、縦の広がりというものを今後ともきちんとしていきたいですね。その為には固定客づくりというものをきちんとしていかなければならないと思っています。

最後にビズプロ・クロスをご覧になっている皆様へ

安心・安全は当然のごとく、それ以上にお菓子を通しての人とのお繋がりというものを大事にしていきたいですね。当社の商品があることによって、お客様とお話ができたり、何らかのアクションが起こせる。これからも、当社の作るお菓子というものを通しながら、社会人としてお客様に答えられるだけの企業並びに人格形成をきちんとしていきたいと思っています。

株式会社玉澤総本店
〒980-0011 宮城県仙台市青葉区上杉3-9-57
TEL 022-223-2804
HP: http://www.tamazawa.co.jp/index.html